家の近くに2匹のワンちゃんがいました。
僕は勝手に「シロ」と「クロ」と名付けました。
向かいの家にいるのがシロで、隣の家にいるのがクロです。
シロもクロも日本犬の雑種で、玄関の横に犬小屋があって、そこで過ごしていました。
シロもクロもよく吠える犬でした。
玄関横にいるから、そこに他人が近づいてきたら吠えるのは当たり前ですね。
「番犬が自分の使命!」と思っていたはずです。
シロは、毎日朝と夕方に人間のお父さんお母さんと お散歩に出かけます。
クロは、お散歩に行くことはなく、いつも玄関の横に繋がれたままでした。
トイレも犬小屋の周りで済ませていたんです。
そのうち、クロは吠えない犬になり、黒い瞳は何も映さずその中には絶望の闇があるだけのような犬になっていきました。
お散歩に行くこともありましたが、いつも犬小屋の前で伏せをしているだけで滅多に歩くこともなかったので、足はヨロヨロしているし、飼い主さんと心の交流もないので、リードで嫌々引かれて50mくらい歩くだけでした。
そんな状態が5年くらい続いた暑い夏の日、クロは玄関の段の下で四本の足を伸ばして倒れていました。
誰に看取られるでもなく、たった一人で天国にいきました。
ペットはいつも我慢しています。
文句も言いません。
僕たちの命はたったの15年そこら(僕はあと10年は生きないね)です。
その間は、なるべく一緒に過ごしてほしいし、できれば愛して欲しいなぁ。
「クロさん、君は人間に絶望してしまったかもしれないけど、動物のことをとても大切に思っている人も多いんだよ。きっと君の飼い主さんだって、そうだったんだけど、きっと、いろんな事情があったんだよ。
次、生まれて来たら、きっと優しい人と出会えると思うよ。だから怖がらないで、また生まれ変わって、この世にやってきて欲しいよ。」